溺れる唇
ドアを出ると、裕馬が壁にもたれて
立っていた。
手に持った財布を見て、くすっと笑う。
「勘繰られちゃった?」
全部、聞こえていたらしい。
「うるさい。ばか」
「早く来ればいーのに、グズるから」
そうだった。
いつも、こんな感じだった。
裕馬はこうやって私に従順なポーズを
とって、結局、自分の思い通りに私を
振り回す。
私はそれをわかっていながら、
追い込まれて、振り回されて、
ため息をつく。