溺れる唇
大人になったのね。
今は、歩調を合わせてくれる裕馬に、
『成長したんだな』
なんて、親のような感想を持ってしまい、
私は思わず吹き出す。
「え?なに?」
「なんでもない」
大人に、なったんだ。
「なんだよ、ヤな感じ~」
フザケた感じで言う横顔は、昔と変わら
ないように見えるけれど。
Tシャツばかり着ていた頃とは違い、
今の裕馬は別人のようだ。
スーツが似合う、大人の男。
なんだか、胸がきゅん、とした。