溺れる唇


ここはシステム管理部。

日当たりの悪い地下にあるこの部署は、入社時に明示された時間を過ぎても
せっせと働く社員がいるところだ。


そう、例えば今日のように。


さっきのメールがきちんと
【送信済みBOX 】に入ったことを
確認すると、私は静かになった電話の
受話器を取り、短縮の【1】を押した。

「お疲れ様です。沢田です」
「どうした」

答えるのは、
関係者以外立ち入り禁止で
専用入室カード必須の
サーバー室で仕事中の上司、
笠井だった。

「緊急メンテナンスの連絡メール、
送信完了しました」
「俺にもCCで送ってくれたか」
「はい、もちろん。まとめたデータは
共有フォルダに入れておきましたので、
後で確認しておいて下さい」


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