溺れる唇


ふう、やっと解放されたわ。


足元を覗きこむ裕馬の目の前で、
トントン、と足を動かしてやる。


本当に大丈夫そうだ。

やはり、日頃から少しでも体を動かして
おく、というのは大事なことなのね。

以前なら、捻挫くらいしてたと思う。


「気のせいだったみたい」

しらっ、と言ってやると、裕馬は
私の意図に気がついたようで、
あ、と動きを止めた。

そして、顔に手を当てて笑いだす。


< 81 / 344 >

この作品をシェア

pagetop