溺れる唇
ドアノブに手をかけ、こちらを向いた
裕馬に、はっ!と気づいた私は、
握った拳で唇をかばい、後ろに
跳び退いた拍子に壁に激突した。
「うっ!」
したたかに背中を打ち付けて息が
詰まり、うずくまってしまうバカな私。
「大丈夫?」
助けおこそうとする裕馬をキッと
睨みつけ、私はきっぱりと言い切った。
「大丈夫よっ!」
突き飛ばす勢いで立ち上がったのを、
ひょい、とかわされる。
「おっと」
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