【BL】咲き散る桜の元で…

「遠くで愛でるのも良いけど、近くで見るのも一興だ。」


輝かしい笑顔。
この笑顔は何年経っても変わることがない。




風で舞った桜が辺りに散る。



「こういうの桜吹雪って言うのかな。」



そうだ。

初めて出逢ったのも、桜の木の下だった。


花弁を纏ったアナタを。
少し悲しげな顔をしていたアナタを。

――守りたいと思った。



たった一度だけ見た、あの悲しげな顔。
あんな顔にさせないために。
ずっと笑っていてほしいから、

俺はアナタを守ると誓った。




「桜は…父上が好きな花だった。」
「時塚様はお好きですか？」
「……そうだな。俺も好きだ。」
「では毎年、この桜を愛でましょう。」



時塚様の頭に乗った花弁を、指先で風に返す。



「来年も再来年も、共に桜を愛でましょう。」
「…うん。いいな、それ。どうせなら花見をしよう。約束だ。」



目を輝かせて、小指を差し出すものだから面食らった。