10日間のキセキ
『メール?…じゃない、着信だ。』
慌てて、携帯を手にした。
(え?嘘でしょ?)
その番号は、アドレスに登録されていない。
だけど、見覚えのありすぎる11桁だった。
その番号が着信画面で点滅している。
『拓…なんで?』
一瞬ためらった。
1年前の自分に引き戻されそうな、そんな気がして・・
迷いながら、ダイヤルキーを押した。
‥大丈夫
今のあたしは、以前のあたしとは違う。
そう、心に言い効かせながら。
“もしもし?真奈?今から出れる?”
その声に胸の奥がギュッと締め付けられる。
咄嗟に言葉を返すことが出来ない。
『・・・、』
“窓から、みて?”
出窓に駆け寄り、カーテンを開けて外を覗いた。
マンションの3階の角部屋だから、各部屋に窓がある。
あたしの部屋のそこは、ちょうど側道が見える位置だ。
見覚えのない赤いRV車が、道路の脇に停められていた。
そして、見覚えのある男が出窓に向けてひらひらと手を振っている。
その男は、【森山拓也】
あたしの恋人・・・だった人物、
俗に言う【元彼】だ。
あたしはそう認識していた。
あの恋は一年前に終わったものだと思っていた。
なのに何故、拓也は訪ねて来たんだろう。
屈託のない笑顔をみると、自分の思い込みだったのかと勘違いしそうになる。