溺れる。
距離
バイト帰りちょうど今から仕事だという玲さんに乗せてもらって、帰宅したからいつもよりだいぶ早く家に着いた。
時刻は5時半過ぎ。
……今日は塚本さん、来るのかな。
いつも連絡なしで来るからなー。私が予定あったらどうするんだろ、なんて思いながら一人じゃ食べきれない量の夕飯を作る自分がいて。
なんだか急におかしさが込み上げてきて、ふふっと一人で笑ってしまった。
来るにしても来ないにしても、連絡なんか来るわけないのに、しっかりエプロンのポケットに携帯を入れておく自分も。
まだお風呂に入んないのに、バスタブに熱いお湯を溜めている自分も。
全部、全部。
塚本さんを"好き"という気持ちで動いてて、自分で自分に救いようがないな、と呆れた。
……けれど。どう足かいても私と塚本さんの肩書きは"恋人"ではない。
約束しなくても必ず来てくれると確信できる関係じゃない。
その日。
いくら待っても塚本さんは家に来ることはなく。
大量に余ったポトフと温くなってしまったお風呂が追い討ちをかけ、私は塚本さんの煙草と香水の香りが染みついてるソファーを抱きしめて。
子供のように大声を上げて泣いた。