溺れる。




そのあとは冷静さを取り戻した塚本さんは「悪ィな、」と頭を撫でながら謝り、ブラックコーヒーだけ飲んですぐに帰ってしまった。


「じゃあまたな」の言葉と共にパタンと閉められたドアを見て、体から力が抜け、その場にズルズルとしゃがみ込む。



なん、だったんだろうか…。
あんなに強引に…感情的に唇をぶつけてくるなんて今までなかった。




「わかん、ない…」



塚本さんの考えてることが…全然わかんない。




なんで…玲さんが好きなのに、キスするの?


あんなに優しく名前を呼ぶの?


玲さんには店長がいるから?







「もう…、いや…」




考えれば考えるだけ惨めになる。



いっそ嫌いになれればラクなのに、なんて何回思ったかわかんない。




それなのに、そんな私の思考とは比例して、会う度募っていく気持ちに、留まることを知らない塚本さんへの想いに。




いつか蓋をしてきたこの気持ちが溢れてしまうんじゃないかってすごく怖くなった。


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