溺れる。
−第1−
ブラック
――カランコロン
「お疲れ様でしたー…」
一歩外へ踏み出し、視界に映ったのは人の群れと人工的な明かり。派手な看板や高層ビルが立ち並ぶこの街が――…私は好きじゃない。
こんなに人に溢れてるのにこの中に私を知っている人はいない。
こんなにたくさんのお店があるのに、私が落ち着ける場所はない。
そう、痛感してしまうから。
広くて華やかなこの街はいつも私を孤独へと誘う。
思わず洩れたため息は、白く吐き出され、緩く吹いた風は容赦なく足に突き刺さる。
まだ冬と呼ぶには早い10月末。
寂しいと感じるのは、秋のせいだと信じたい。