溺れる。
バイト帰り、見慣れた景色をボーッと眺めながら、歩く速度を速める。
秋なのにこんなに寒いなんて、と冷えた指先を摩りながらまた、速度を速めた。
学校から遠いという理由で、高校の頃から始めた一人暮らしは、良くか悪くかいつも部屋は静まり返っていて。
ふと、この世界に一人ぼっちになったような、そんな気持ちになることも多い。
―――…
小さなアパートの階段をカンカンと鳴らし、一番奥のドアの前で立ち止まる。
ガサゴソと鞄を探る…と、それを見計らったように
「おー、おかえり」
ガチャッという音と共に玄関が開いた。
それに対し、私はさも何でもないことのように鞄の中から手を出し、そのままドアを支え、無言で靴を脱ぎながら呟いた。
「……来てたんですか、塚本さん」