なえる
「私、週末に三田村主任に会っちゃった」

「どこで？」

「親戚の家に行く途中の公園でさ、子供と遊んでいたの。すごくいい家に住んでるわよ、きっと」

「なんでわかるのよ？」

「だってF町の住宅街よ。周りなんていい家ばかりだったもの」

「私も見たい。で、奥さんも一緒だったの？」

「ううん。主任ひとりだった」

「そうなんだぁ」

　いつものランチの時間の会話だ。ただ、いつもと違うものがみよしの身体を突き抜けた。

　週末にパソコンに向って仕事をしている姿を想像していたみよしにとって、子供と遊んでいたという事実はかなりのショックを受けた。

　お弁当がまだ半分以上残っていたが、目に見えない何かがみよしの喉を通り抜けたせいで食べる気になれなかった。

「私も子供欲しいなぁ」

「わたしもー。主任が子供は宝物だって言ってたわよ」

「それってどこの公園ですか」

　一緒にランチをしていた三人の女子社員が一斉にみよしを見た。みよしは初めて三田村の話題に言葉を発した。
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