なえる
 水曜日に三田村はみよしが住むアパートに来た。週末に何をしていたのか聞いてみたかったが、みよしは聞かなかった。

 三田村にとって、何も言わず余計なことを聞こうともしないみよしは都合のいい女なのかもしれない。

 みよしは恐かった。少しでも三田村の機嫌を損ねてしまうと、もう二度と会えなくなるのではないか。会えなくなるくらいなら、自分が我慢をすればいい。こんなことを一年間も続けている。

 みよしを抱いたあとの三田村はいつも眠ってしまう。もう少し会話をしたり、そっと抱いてくれているだけでもいいから三田村を感じていたいと思うのだが、そんな思いも我慢するしかない。

 三田村の子供のような寝顔を見て、同僚から聞いた公園に子供といたという話しを思い出した。

 三田村の子供と妻の顔が見てみたい。だが、そんな気持ちを知ったら三田村は怒るにちがいない。

 しかし、この欲求だけは抑えられそうもなかった。みよしは、週末に公園に行ってみようと決めた。

 三田村に知られないように上手くやればいいことだ。久しぶりに週末出掛ける用事ができたと、みよしの胸は高鳴った。
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