なえる
 次の週に公園に行ってみると、三田村の妻は姿を見せなかった。三田村と子供たちと出掛けたに違いないと嫉妬がみよしの心と体を包んだ。

 それからもみよしの公園通いは続いた。まだ三田村の姿を見たことはない。公園に通ううち、みよしはどうしても許せないことがあった。

 いつもいつも三田村の妻が笑っていることに耐えられないのだ。何故そんなに笑顔でいられるの。

 自分の旦那と愛し合っている女がすぐ近くにいるというのに、どうして気付かないの。

 あなたを見ている女がいることに何故、気付かない。幸せそうに笑いやがって。

 私は妻という存在を知っていて苦しんでいるのに、あなたは私という存在を知らずに、幸せに生きているのは不公平ではないか。

 みよしがどんなに視線をおくっても、三田村の妻と目が合わないまま時は過ぎていった。
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