なえる
 公園内の母親たちに笑顔が戻ってきていた。みよしが現れなくなったので、安心したのだろう。

 子供たちが元気に走り回り、母親たちも楽しく会話をしているようだ。もちろん、その輪の中に三田村の妻もいる。

 公園内に一人の人間が入ってきたのをみよしは確認した。やっと、みよしが待ち焦がれていた形がやってきた。

 みよしも公園の中に入り、歩いていく。

 少しずつ距離が近付き、みよしは立ち止まった。

 みよしの視線の先に、三田村と三田村の妻がいる。

 三田村が笑うと、妻も笑い、子供も笑う。

 男の子が三田村に車のおもちゃを手渡し、三田村がそれを受け取る。

 みよしはみつめ続けた。ただ、黙ってみつめ続けた。
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