なえる
 みよしが初めて見る笑顔で三田村が笑っている。だが、その笑顔が凍りついた。みよしに気が付いたからだ。

 みるみるうちに、三田村の顔が青ざめていく。それは以前、愛撫の途中で三田村のペニスが萎えていったときと同じように、今度は三田村の顔が萎えていった。

 妻だの愛人だのと関係なく、女は簡単に男を萎えさせてしまうものなのか。

 三田村の変化に、横にいた妻が気付いたようで、みよしと三田村の顔を交互に見ている。

 妻の記憶にみよしの存在は残っているはずだ。直感で、三田村の表情とみよしを結びつけるだろう。

 これで私の週末を知ればいい。みよしはこれで充分だった。

 公園を出て、駅までゆっくりと歩いた。
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