なえる
《水曜日じゃなくてもいいので、他の日でも会えないのですか》

 みよしは三田村に火曜日の朝メールをしてみたが、昼休みの時間になっても返事はこない。

 朝の挨拶を交わし、何度か目が合って少し笑いかけたりしてくれたが、それでみよしの心の隙間が埋まるはずもなかった。

 みよしはアパレル会社の倉庫で出入作業の仕事をしている。倉庫内で働く大多数は派遣会社から派遣されている人間だ。不景気の今、会社はあまり残業をやらせたがらない。

 しかし、一日でその日の仕事が終わるときもあれば、残るときだってある。そんな日は気が重たくなった。

 一斉に派遣社員たちが上がり、残りは派遣社員よりも少ない社員がやらなければならないからだ。

 一年前の五月のときもそうだった。商品の入荷した数と検品した数が合わない。検品は普段ハンディスキャナーを使って商品についているバーコードを読みとっていくものだ。

 この作業は人をみて、この人になら、という人間にしてもらっている。

「確か、今日初めてハンディを持った人がいたっけ」

 みよしもハンディを初めて持った日にミスをしたことがあった。

 みよしが一人でパソコンに向っていると声をかけられた。

「大丈夫?」

 声をかけてきたのは主任の三田村だった。
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