なえる
「はい」

 みよしは三田村に話しかけられると決まって緊張した。好きという感情があったわけではないが、スレンダーで長身のみよしと違った垢抜けた容姿に気後れしてうまく話せなかった。

「原因はわかったの」

「はい、多分二重スキャンだと思います」

 みよしは三田村の顔をまっすぐ見ることができず、伝票を見ながらそう答えた。

「そうか。それなら処理のやり方はわかるよね?」

「はい」

 いつもなら用事が済むとすぐに立ち去るのだが、このときは中々去ろうとしない。

 目で確認しなくても、三田村がみよしを見ていることがわかった。

「金田さんは、いつもひたむきだよね」

「え?」

 そのとき初めて三田村の顔を見た。やはり、三田村はみよしを見ていた。

「今日も早く終わらせて、帰ろう」
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