-月姫-
机からテストを取り上げながら、呆れたようにして言う女子生徒。
「七夜ちん。それヒドイ。フツー親友のあたし慰めるでしょ~」
「いやそれおかしいし。ってか、次移動なんだから置いてくぞ~」
自分はちゃっかり美術の本と絵の具を持っていて、神楽はズルイとか文句言いながらあたふたと準備する。
「ちょっと皆! 美術の柏木先生が産気付いて今病院運ばれたらしいから、今日は新任の超絶美形の男の先生が来るんだって~!」
委員バッジを付けた女子生徒が息を切らせながら言うと、男子達はブーイング。女子達は目を光らせた。
「七夜ちん…」
「神楽…」
二人は真剣な目を合わせて頷き、ソッコーマッハで美術室へと駆けて行った。
かなり早めに来たつもりだったのだが、二人が到着したときにはほぼ全員が美術室に着いて、席に座っていた。
(なんでこんなに早いの皆っ)
二人は肩で息しながら思った。
「君達で、最後みたいだね?」
脳天直下型の甘く低い男のボイス。
二人はすかさず教卓に視線を移した。