-月姫-
あらかたの矢を打ち放ってしまい、神楽は痺れる手で的に当たっている矢を抜いていた。
「しっかし…」
打った矢を数えてみれば、40本近くに達していた。
「よく打ったわこりゃ…」
せっかくの的が、かわいそうなくらい穴だらけ。当てたにしても、よくこれだけ撃ったものだ。
よっこらせと言いながら抜いた矢を持ち上げ、矢筒の中に片付ける。
ふと道場の隅を見てみれば、七夜が壁にもたれてぬむっていた。ずっと付き添っていたようで、待ちくたびれたようだ。
空を見れば、日はとっぷりと暮れ、満月が上りかけていた。
「あ。今日の月赤いな~」
ポソリと呟くように言うと、めったにない頭痛が襲う。
「いっ、たっ!」
あまりの頭痛に膝を付いて呻いていると、しわがれ声の老婆の声が聞こえてきた。
【目覚めの時は来た! 千年の時を経て甦るのだ!】
七夜が目覚め、目をこすりながら神楽を見ると、頭を抱えて横たわって呻いていた。
「えっ?! ちょっ! 神楽大丈夫!?」
「な…なな…あたま…いた…誰か…」
額の血管が浮き上がり、道場の暗い電気の明かりで見える顔色は真っ青に。
誰かを呼ぼうにも、道場は校舎から大分離れているため、神楽を置いて呼びにもいけず。
まして担いでいける力もない。