-月姫-
ピト…ン……
どこからか水の滴る音が聞こえる。
そして、囁くような言葉も聞こえてくる。
それが理解できる言葉かどうかはさだかではないが、だが、彼女はなぜか理解できた。
知らない言葉のはずなのに…。
「輝夜姫、……姫。卑しき地を踏みし青の民より、月の秘宝を取り戻してきなさい」
二人の姫の名をよんだようだが、彼女には輝夜姫としか聞こえなかった。
「大婆様。わたくし達がなぜ卑しき青の民の地へと赴かねばならぬのです?」
「わたくし達は月の姫ですわ。そんな場所へなど、行きたくはありませぬ」
二人の姫は、断固として行こうとはしなかった。
「これは月の帝国全土の問題じゃ。そなたらが月の女王となる証を盗まれたのじゃ! これは帝国始まって以来の由々しき汚点! そなたらが行かねば何とする!」
二人の姫は顔を見合わせた。