-月姫-


 更に何か言おうとした二人の姫の言葉を遮り、大婆は言葉を続けた。

「次の女王になるものは、月読様の妻となる資格を与えられる」

『月読様の!?』

 一人は跳びはねて歓喜の声を上げ、一人は疑問に満ちた表情で声を上げた。

「大婆様! わたくし、月読様の為なら卑しき地上へと参ります!」

「十六夜!? あなた、一番嫌がってたのに!」

 十六夜と呼ばれた姫は、呼ばれたもう片方の姫に力強く言う。

「輝夜姉様。わたくし小さい頃から月読様をお慕いしてました。お姉様でも止めることは叶いませんわ!」

 輝夜は十六夜の言葉にたじろい、言葉を詰まらせた。

「危険なことは承知の上です。罪人からわたくしの宝を返して貰うために行くのですから、簡単ですわ」

 いつの間にやら十六夜だけの宝という方向になってしまい、輝夜は困惑気味だ。

 妹の、この楽観的で常識はずれなところがあるのが心配な輝夜。
 言い出したら聞かない、わがまま十六夜姫。

 輝夜は深いため息をついた。

 
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