-月姫-


 輝夜は頭に着けていた月花の簪を、十六夜姫の頭に挿した。

「あなたが行くというのなら、わたくしも行かざるを得ません」

「お姉様も、月読様の妻になりたいのね?」

 嫉妬混じりの空気を漂わせながら、輝夜を見上げる。

「わたくしは、妻になる気など全くないわ。わたくしは誰にも従わない、誰にも縛られない。わたくしはわたくし。誰のものにもならないわ」

「ではなぜ!?」

 頭を撫でながら、十六夜の心を静める。

「妹を護る為。ではいけないかしら?」

「お姉様…」

 大婆がそれを聞き、二人の決心が決まった所で声をかけた。

「二人の姫には、一度赤子となって地上へと行ってもらうこととなる」

『え?』

 二人に月の鉱石である『月光石』を手渡し、大婆は言葉を続けた。


 
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