幸せ家族計画
綾乃が妊娠しているかもしれない。
その可能性に気付いた途端、俺の中で何かが動き出した。
ここ1ヶ月ほど、不安そうな面持ちで俺を見つめていた綾乃。
どうしてそんな風に見られるのか、分からなかった。
新婚旅行の夜、「そんな不安そうにみられるのイヤ」と言って泣いた彼女。
不安そうなのは、そっちの方じゃないか。
そう思って、でも言えなかった。
言ってしまったら、ますます綾乃を傷つけてしまうんじゃないかと思うと、強気に出るのはためらわれた。
思えば、いつも俺はそうだ。
無意識に相手の反応をうかがう癖がある。
そしていつの間にか傷つける。
傷つけてしまった理由が分からないから、いつも自分の内側に溜めこんでしまう。
それを相手が不満に思って、俺の目の前からいなくなったとしても、仕方がないことだ思っていた。
俺は自分を変えられないから。
だけど、綾乃だけは嫌だ。
絶対に失くしたくない。
居なくなったら生きていけない。
情けないけど、本当にそう思えるから恐ろしい。
どこにも行かないでくれ。
俺に出来ることなら、何でもするから。