幸せ家族計画
車を駐車場に停めて、急いでアパートの階段を上る。
外から見た感じだと、明かりがついていなかった。
どこかに行っているのか?
こんな時間に?
時計を見ればもう21時を回っている。
「綾乃!」
急いで鍵を開けて、室内に入る。
静まった空気が妙に冷えていて、背筋がゾクリとした。
「アヤ」
明らかに居ない様子の室内に、何度もその名前をこだまさせる。
返ってくるのは、ブーンと低く唸るような冷蔵庫の機械音だけだ。
「どこ行ったんだよ」
軽く舌打ちが飛び出す。
体の奥底から焦りが湧きだしてきて、胸の奥がちりちりと焼けつくようだ。
ちらつくのは、綾乃が妹としての自分を捨ててあの家を出て行った日の光景。
ぬくもりのある、どこよりも安心できるはずだった家が、一瞬にして色を失くしたあの日。