幸せ家族計画
携帯電話をとりだし、綾乃の番号にかける。
落ち着け。
落ち着け。
問い詰めたりしないよう、自分を押さえつける。
何故俺に話さないのか。
どうして俺を信じないのか。
聞きたい事はたくさんある。
だけど、どんな問いかけも綾乃を追い詰めるばかりのような気がして、
上手い言葉が思い付かない。
『もしもし?』
呟き程の小さな声が鼓膜を震わす。
思わず安堵の息が出て、肩の辺りが一気に重たくなった。
「綾乃。俺だ。今どこに居る?」
『飲んでくるんじゃなかったの?』
「やめたんだ。今はもう家についてる。一体どこに居るんだ」
『それは……』
電話越しに聞こえる溜息が彼女のためらいを伝えてくる。
待っていても埒が明かないようなので、自分から切り出してみた。