幸せ家族計画
「どうも、綾乃ちゃんが家に来ているらしいぞ。
詳しくは聞いてないけど、紗彩と話した感じでは和やかそうだった」
「なんで紗彩のところに行くかさっぱり分からない。
実は……検査薬があったんだ」
「は?」
「ゴミ箱に、妊娠検査薬が捨ててあった」
「結果は?」
「マル」
「良かったじゃん」
「なのに、綾乃は紗彩のところに行った。俺に一言も告げずにだ」
ギュッとハンドルを握る手に力がこもる。
すると英治は、いつものように緩く笑った。
「はは。紗彩に妬いてんのかよ」
口調は軽かったが、言葉は絶妙に俺の真意をついていた。
「……悪かったな」
「余裕ないねぇ」
英治のクスクス笑いが止まらない。
若干不快な気分で、頭の後ろをかく。