幸せ家族計画
「でもさ、夫婦って、普通は他人から始まるもんだろ?」
「……」
「それが時間とともに家族になる。
俺はもう、紗彩とサユを俺の家族だって言える。
俺に無断で居なくなるなんて事、考えたこともない。
それくらい、信用できるようになった。
そんな家族を、お前はこれから作るんだよ。
綾乃ちゃんと一緒に」
目の前に光が広がったような気分。
イヤ実際には、反対からくる車の光が目に染みただけだが。
ずっと、綾乃が出て行った日の光景が頭から離れなかった。
不安が影のように付きまとって、いつだって空恐ろしかった。
だけどそうか。
これからだ。
俺たちはこれからだったんだ。
「早く行こうぜ」
「ああ」
足早になる俺に、にやりと笑顔を向けて英治は煙草を消す。
見透かされてる感じが、悔しくも心地良い。
こういうのを、安心感って言うんだろうか。
何だかずっと忘れていたような気がする。