幸せ家族計画
「ダメ?」
「ダメ……じゃない」
「じゃ、いい?」
そのまま唇を寄せると、彼女は大人しく目を閉じた。
壁に背中を押しつけて、彼女の両の手に掌を重ねる。
そうして動きを拘束したまま、唇を重ねた。
触れる唇は温かく弾力があり、繰り返すうちに深くなる。
やばい。
玄関先でその気になっちゃう前に聞かなきゃいけないことがあるんだった。
「でもさ」
紗彩の吐息を唇で受け止めながら、少しだけ体制を直す。
「真面目に話すけど、ホントにいいか?
子供が出来たとして、一番生活が変わるのは紗彩だ」
「まあ、そうね」
「仕事だって好きだろ?
でも制限しなきゃいけなくなる。
家庭に素直に収まるタイプでもないだろ?
ストレスにならないか少し心配してる」
「それって酷くない?」
不貞腐れたように、彼女が俺を睨む。
それを微笑で受け止めつつ、顎のあたりを撫でながら返事をした。