幸せ家族計画
サユが持ってきた2つのマグカップにインスタントコーヒーをいれようとした時、紗彩が口を開いた。
「ママはコーヒーいらないわ」
「え? なんで?」
「なんとなくよ。しばらくやめることにしたの」
「ふうん。そう言えば前もそんなこと言ってた時あったね。コーヒーって時々やめたくなるの?」
「ううん。なんとなく、よ」
何の気なく、二人の会話を聞きながら。
紗彩の意図に思い当って驚く。
「紗彩」
「なあに? 英治くん」
「いや。……母親ってすごいよな」
そう言うと、紗彩がいたずらを仕掛けたみたいに笑った。
俺は何故だかドキリとして、慌てて新聞を前に広げ、サユの不思議そうな視線をよける。
参ったな。
ずっと恋をさせてもらえるのは、俺の方かも知れない。
【fin.】