幸せ家族計画


「じゃあ、俺は会社戻るわ。
またねー、綾乃ちゃん」

「あ、はい」

「英治行くのか?」

「ああ」


手をひらひらさせながら、英治さんは足早に店を出て行く。
いつの間に出したのか、テーブルの上には千円札。

コーヒー代かしら。
抜かりのない人だなぁ。


「何だか楽しそうに話してたな」

「うん。葉山さんっていい人だね」


私の笑顔に、達雄の顔が凍りつく。

あれ?
何か変なこと言っちゃったかしら。


「だからイヤだったんだ」

「何が?」

「英治に会わせると、大抵のヤツは英治の方を気に入る」


お腹を押さえたまま、苦しそうにそう言う彼が、なんだかとっても愛しいから。


「ヤキモチ焼きね」


って、余裕ぶって言ってみたら、ますます情けない顔になってしまう。

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