幸せ家族計画
宿題をしながら、ツインテールに結った髪の先をぺろりと舐めているとママに怒られた。
「髪の毛が臭くなるわよ。それに汚いよ。バイ菌ついてるんだから」
「でもサユの一部でしょ? 髪の毛」
「でもバイ菌はつくの。洗ってない手を舐めるのと一緒よ」
「髪だって洗ってるよう」
「一日に一回でしょ? もう夜だもの、一番汚い時じゃないの」
「はぁい」
ママは厳しい。
だけどわたしは、ママの事が大好き。
髪を伸ばしているのだって、ママみたいになりたいからだもん。
わたしのパパはわたしが2歳の時に死んでしまった。
だからパパの事は良く覚えてない。
仏壇に飾られている写真と、アルバムに貼られている赤ちゃんの私を抱っこしている姿が、わたしの中のパパの全て。
それでもパパのことを時々思い出すのは、ママがパパのことを忘れていないからだと思う。
『パパは紗優の事が大好きだったのよ』
ママが何度も繰り返す言葉。
好かれていたのだから、わたしも好き。
ママが話してくれるから、パパの事は忘れない。