幸せ家族計画
中庭には木がいっぱいあった。
ところどころに影ができてて、天気のいい今日みたいな日は気持ちいい。
「サトルくん、学校楽しい?」
「うん。サユちゃんは?」
「楽しいよ」
でも、サトルくんがいたらもっといいけどなぁ。
「保育園の実夏せんせい、げんきかな?」
「ボク、年長さんのとき担任だった。あのね、けっこんしたんだよ。名字が変わったの」
「あ、サユも変わったよ? いまね、葉山紗優なの」
「葉山って言うの?」
わたしたちは、木陰でしゃがみながらお話しする。
時々、地面に絵をかいたりする。
保育園の時、サトルくんはわたしの絵を褒めてくれた。
それが嬉しかったから、絵を描くのは大好きになった。
「お父さんは、タバコくさいんだよー。
でもね、力持ちで優しいの。
キャッチボールもしてくれるよ?」
「え?」
なぜか、サトルくんの眉が寄ってる。
あれ? どうして?
「あのおじさんと、キャッチボールするの?」
「うん。もうボールもとれるようになったよ!」
いつかサトルくんとキャッチボールしたくて、頑張ったんだから。