幸せ家族計画


「サトルくん」

「サユちゃんのバカ!」


わたしは、泣き虫じゃない。

涙は我慢できる。

だけど。


目の前のサトルくんが、どんどんぼやけていく。

喉が熱い。
目の周りも熱い。

声を出すのが苦しいくらい、涙がこみ上げてくる。


ダメだ。

わたし。

サトルくんの前でだけは強い子になれない。


「う、うわああああああん」

「あ」


サトルくんは、しまった、って顔をして俯いた。

だけどわたしは、もう涙を我慢することが出来ない。


「うえええん。あああん」


どんどんあふれてくる涙が、水たまりでも作ってしまいそう。

息も苦しくて、体中が熱い。

こんな風に全身で泣くのは、久しぶりだ。


「さ、サユちゃん、ごめん」

「うわあああん」

「ごめんね。……ごめん」


涙目になって、サトルくんがうつむく。

前みたいに、わんわん泣いたりしないんだ。

そう思ったら、もっと悲しくなって、涙がますますでてきた。

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