幸せ家族計画
「何泣かせてんだ」
低い声がして、そっちを見るとお父さんが立っている。
サトルくんは体をビクッとさせて、一歩下がった。
「サユ、泣くな」
わたしを抱き寄せて、お父さんがサトルくんの方を睨む。
「何したんだ。ケンカしたのか?」
「ボ、ボク……」
「おと、……さん。いいの。やめて」
「でもサユ」
「いいの」
お父さんが、わたしの涙を拭いてくれて、ぎゅって抱きしめてくれた。
それで少し落ち着いて、わたしは涙を止めることが出来た。
「サトルくん。わたし、イヤなこと言った?」
サトルくんは、真っ赤な顔で首をぶんぶんと振る。
「怒らせてごめんなさい」
「違う。サユちゃん、……ごめん」
涙交じりの声でそう言った。
わたしは、それ以上サトルくんと話すのが怖くて、お父さんにしがみついた。
お父さんは一度溜息をつくと、わたしの肩をポンと叩く。
「とりあえず、二人とも戻ろう?」
その声は優しかったけど、いつもは傍にいてもあったかさしか感じないお父さんから、ピリピリした空気が伝わっきて。
それがサトルくんにも分かるみたいで、困ったように俯いていた。