幸せ家族計画
確か中庭に行くと言っていた気がする。
壁に書かれている案内板を頼りに、中庭への出入口を見つけ出した。
その途端に、大きな泣き声が聞こえた。
声の方向を見て一瞬目を疑った。
サユが泣いてる。
体を震わせながら、大きな声を出してわんわん泣いてる。
それは俺が今までに、一度も見たことのない泣き方だった。
こんなに頭が真っ白になったのは初めてかもしれない。
気が付いたら、二人の傍に行き、サユを腕の中に抱き寄せていた。
「何泣かせてんだ」
サトルの体がビクリと揺れる。
その時初めて、少年の表情を見る余裕が生まれた。
真っ赤な顔で、泣きだすのを堪えている。
俺は少し冷静さを取り戻して、サユの背中を撫でる。
「何したんだ。ケンカしたのか?」
「ボ、ボク……」
「おと、……さん。いいの。やめて」
「でもサユ」
「いいの」
サユにそう言われては、それ以上の追及もしづらい。
娘を強く抱きしめて、落ち着くのを待つ。