幸せ家族計画
しかしそれを口に出す前にサユが遮った。
「サトルくん、バイバイ」
サトルの赤い顔がますます赤くなる。
「バイバイ」
ダメ押しのようなサユの言葉に、今にも泣きだしそうだ。
サユは紗彩の手を引っ張って逃げるように歩いて行く。
「先行ってて」
俺はポケットから取り出した鍵を紗彩に投げた。
「うん」
運動神経があまり良くない紗彩は、一度は手に受け止めたはずの鍵を落として、あたふたとしている。
思わずクスリと笑ってしまう。
そういうところが、何だか可愛いんだよな。
そのままサトルを追いかける。
頭を垂れたその後ろ姿は、見ていて痛々しいほど落ち込んでいる。
「サトルくん」
「おじさん」
サトルは俺をちらりと見ると、突然何かがはじけたように泣きだした。
「う、うわああああん」
「わあっ、おい、大丈夫か。
さっき、サユとケンカしたのか?」
「うわあん。うわああん」