幸せ家族計画

 駐車場の車の後部座席では、紗彩がサユの背中をさすっていた。


「ママにも言えないこと?」

「ううん。そうじゃないけど。……あ、お父さん!」


窓から覗く俺にいち早くサユが気付く。
俺は運転席に乗り込みながら、手を伸ばして紗彩から鍵を受け取った。


「そのまま帰っていいか? 買い物とかある?」

「ううん。良いわ。うちにあるものでなんか作るから」


元気のないサユを気にしてか、紗彩まで元気が無くなっている。
これじゃあ、赤ん坊の事を話すのも無理そうだ。


 家に戻ると、サユは自分から手洗いもうがいもして、

「ちょっと一人にして」

と言ってそのまま自分の部屋に入ってしまった。


紗彩はというと、キッチンでしょげたように俯いている。


「なにいじけてんの」

「だって。
……やっぱり小さい時に構わなさすぎたのかいけないのかなぁ。
あんなにあからさまに落ち込んでいるのに、紗優、私に何も言ってくれない」

「サユは紗彩に心配かけたくないんだろ? 前からそうだったじゃないか」

「それが悔しいって言ってるのよ。
今更だけど、やっぱり自分のしたことっていつか自分に返ってくるんだわ。
悩み事さえ相談されないなんて親なんて、なんて情けないの」

「紗彩」

< 207 / 419 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop