幸せ家族計画


 ベランダで煙草を一服しながら、手すりに寄りかかりリビングに目をやる。

窓を隔てて見えるのは、ノートPCに向かって手を動かす妻の紗彩。
時折り口元を押さえては、ゆっくりと息を吐きだす。

最近、つわりがひどそうなんだけどな。
家でまで仕事しなきゃいけないほど、たてこんでるんだろうか。

煙草の始末をし、リビングを通り過ぎてキッチンまで行く。

お湯を沸かして、ネットで見つけて買ってみたというタンポポコーヒーを入れてみた。
ノンカフェインで妊婦に人気らしい。


「ほい。休憩すれば?」


紗彩の分と俺の分をマグカップに入れ机の脇に置くと、ようやく紗彩が画面から目を離した。


「あ。ありがとう、英治くん」

「まだやってんの? 仕事たてこんでるのか?」

「え? ……ああ。違う。これはね、小学校のやつ」

「学校の?」


不思議に思って覗きこむと、確かに資料の一部に"夏休み"なんて言葉が混じっている。

でも別に紗彩は役員でも何でもなかったはずだけど。

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