幸せ家族計画


 そして、授業参観の日。

俺が行くことを聞いたサユは満面の笑みを浮かべる。


「じゃあわたし、ちゃんと手をあげるから見てね?」

「ああ」


大きな素振りで手を振って、元気に登校していくサユ。

対して、元気なくパンプスを履く紗彩。
俺が行くことになり、急遽有休を取り消したらしい。

どうせなら休めばいいのにって思うのは俺だけだろうか。


「じゃあお願いします。行ってくるね」

「ああ。任せておけって」

「……ホントに、他のお母さんとかに騒がれてこないでね」

「それって俺がどうこうできるものなのか?」


俺の苦笑を見て、少し考え込むように視線を下げる。
そして、やはり恥ずかしそうにぼそりと言った。


「ごめん、ヤキモチね。やあね、私最近……」

「や、面白いからいいけどな」

「ふふ。行ってきます。お願いね、英治くん」

「ああ」


ヤキモチを焼く紗彩をからかうのも面白いけれど、
やっぱり笑顔が一番だな。

すっきりした気分で、今日着ていくスーツを物色に部屋へと戻った。

サユが恥ずかしくない格好をしないとな。

とりあえず無難にチャコールグレーのスーツでも着て行けばいいか。

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