幸せ家族計画
参観の授業は国語。
音読を指名されたサユは、一度俺を見ると大きな声で読みだした。
はっきりとした滑舌。
感情のこもった抑揚。
最後の文字まできっちり読んで、教師に促されてから座る。
なんというか、サユはソツがないな。
それでも、その後でちらちら俺を探して後ろを見る姿なんかは、やっぱり可愛い。
小さく手を振ってやると、嬉しそうに振り返してくる。
ああ。
なんでサユはこんなに可愛いんだろう。
サユの担任は小学校では珍しい男性教諭で前原先生という。
どことなく落ち着きがないのはまだ若いからだろう。俺の見立てでは27歳くらいだと思う。
参観が終わると懇談会があるのだが、その前に、と職員室まで出向き前原先生を捕まえる。
「先生、葉山です。あのこれ、妻が頼まれたっていう資料なんですが」
「ああ、葉山さん。今日はお父さんの方が来られたんですね?」
「ええ。たまには」
にっこり笑ってみるも、先生の方は残念そうな顔。
まさか、紗彩に気がある訳じゃないだろうな。