幸せ家族計画
夏の暑さが厳しくなり、体調の悪い日々が続いている。
「あー。ごめん」
「紗彩?」
食事を作っている途中で、吐き気をもよおしトイレに入る。
いわゆる『つわり』というやつだ。
仕事中は弱いところは見せられないと強がっているから、休日だと余計に酷い気がする。
「ママ、大丈夫?」
心配そうに、そっと覗いてくるのは紗優。
「大丈夫。お父さんと待ってて?」
吐しゃ物を流し、口元を拭いて、そのまま少し落ち着くのを待つ。
「紗彩、大丈夫か?」
コンロに火をつけたままで来たから、続きをしてくれていたのだろうか。
菜箸を片手に持った英治くんがやってくる。
「うん。大丈夫よ。病気な訳じゃないし」
「病気じゃなくたって辛いもんは辛いだろ。ソファーに横になってろよ。俺が作る」
「ごめん」
「男の料理を見せてやろう」
何故得意気なのかしら。
ふうと息を吐きだしながら、お言葉に甘えることにする。
ソファーから見えるのは、彼と彼の周りをパタパタ動きまわる紗優。