幸せ家族計画

「だからさ……」


英治くんの話をまとめるとこうだった。

1ヶ月くらい前に、仕事で外出して社に戻る途中で、紗優のプレゼントについて悩みながら雑貨屋の店先を見ていた時。

昔の知り合いの川端さんという人に声をかけられたらしい。

その彼が一緒に連れていたのがその"美羽ちゃん"。

女の子の気持ちは女の子の方が分かるかと思って、二人に相談を持ちかけたところ。

『お父さんが選んでくれたプレゼントなら、どんなモノでも嬉しいはずです』と言ってもらえたんだそう。


英治くんの頬が嬉しそうに緩んでいるから。
その言葉は彼の悩みを吹き飛ばす効果があったんだろう。


「その子、お父さんを早くに亡くしてるんだって。だからもらったものは何も覚えてないって。
『お父さんがくれた』っていうその事だけでもう充分嬉しいはずだからって」

「そう」


確かに。
紗優も、ユウから何かもらった記憶はないだろう。

赤ちゃん絵本も、ガラガラも、初めての靴も。
皆ユウが選んだものだったけど、それは覚えているには紗優は小さすぎた。

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