幸せ家族計画
真夏の車はサウナのような熱さだ。
乗った瞬間はあまりの熱気に顔をしかめたが、すぐに冷房が全体に循環して寒いくらいになる。
英治のマンションの前でしばらく待つと、Tシャツにジーンズという軽装の英治がやってきた。
窓を開けて軽く手を振ると、英治は眉をひそめて車体を見る。
「この車、まだ大丈夫なのか?」
ほっとけ。
確かに、もう12年くらい乗ってるかも知れない。
あちこち痛んではいる。
「子供生まれたら大きいのに買い買える」
「なるほど」
ニヤニヤとした視線が嫌だ。
からかわれているような気がする。
早く話を変えたい。
「どこ行く? ちょっと話したいんだけど」
「あー、前に綾乃ちゃんと達雄がランチ食ってた喫茶店がいいな。あそこでなんか食ってみたい」
「『shion』か? うまかったよ。近いし、そこ行こうか」
「おう」