幸せ家族計画

英治が慣れた様子で助手席に乗り込む。
胸ポケットの煙草に手を伸ばそうとしたので、火をつけられる前に牽制する。


「この車、禁煙になったから」

「マジで」

「妊婦が常に乗るんだから当然だろ?」

「あーそうなんだよなー。俺もちょっと悩んでんだよ。どうやったら禁煙できるかなって」

「やる気はあったのか」

「大分前からそう思ってはいる。でもさ、気が付いたら火をつけてるんだよな」


習性ってやつだな。
そう簡単には変わらないだろう。


「そもそも買わなきゃいいんじゃないの?」

「それがまあ、気がつくと自販機でコインを入れてる」

「お前、やめる気ないだろ」


軽口を叩き合っていると、目的地にはすぐに到着した。


前に綾乃と一緒に行った喫茶店『shion』。
マスターこだわりの珈琲がうまかった。


「いらっしゃいませ」


時刻は11時。
ランチには少し早い時間だからか、店内はそれほど混んでいない。
窓際の席に通してもらい、コーヒーと軽食を注文する。

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