幸せ家族計画
一瞬沈黙したそのタイミングで、店の扉が開く音が響いた。
「あれ、あの子」
店に入ってきた女の子を見て、英治が声を上げる。
綺麗な顔立ちの大人しそうな女の子だ。
綾乃と同じくらいの歳だろう。
どことなく印象がダブる。
知り合いかな?
とはいえ、俺も見たことがある顔だ。
しばらくまじまじと見ていて、突然に閃いた。
仕事で文具メーカーにプリンター修理に行った時に応対してくれた女の子だ。
彼女の方も俺たちに気付いたのか、軽く会釈をしてカウンターに座る。
「あれ、達雄も知り合いか?」
「英治こそ、なんで知ってんだ?」
「俺は、前にちょっと相談に乗ってもらったことがあって」
「なんだよ、相談って。怪しいな。紗彩に言いつけてもいいか?」
「怪しくないって。そっちこそ、綾乃ちゃんにチクルぞ」
子供のような会話をしながら、先ほどの彼女に視線を送る。
カウンターで珈琲を飲みながら、ファイルを眺めているようだ。