幸せ家族計画

喫茶店に一人で入れる女の子ってのも何だか珍しい気がする。
綾乃だったらどうだろう。一人なら入らず家で珈琲を飲むよな。


「俺は仕事で会ったんだよ。
ホラ、オンリー文具のさ。この間修理依頼があっただろ?」

「ああ、あそこの会社だったな、そう言えば。達雄、川端くんって覚えてるか?」

「川端? さあ」

「今はその会社の企画課の主任をしてるんだけど。昔さ、ポインターがどうこう言って相談持ちかけてきたんだ。あの時、達雄も居なかったっけ」

「ああ。そう言えばそんな事もあったかな」


でももう随分前の話で詳しい事は覚えていない。
ただ、わざわざ他の会社にまで来て熱心だなとは思っていた。


「その川端くんが何?」

「一か月前くらいに、川端くんとそこの美羽ちゃんが一緒に居るところにバッタリ出会ってさ。
サユの誕生日プレゼントの相談に乗ってもらったんだ。
そう言えばあの時のお礼もしてなかったな。
呼んでもいいか? おーい、美羽ちゃん」


呼んでもいいか、と聞くなら、答えるだけの間は待ってほしい。
呼ばれた彼女の方も、驚いて怪訝な顔をしている。

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