幸せ家族計画

「こ、こんにちは」


おずおずという感じでやってきた彼女は、英治に会釈した後俺の方を見て「あ」と小さく言った。


「プリンターの修理に来てくれた……」

「分かりました? あの時はお世話になりました」

「いいえ。こちらこそ。すぐ対応していただいて助かりました」


事務的な会話が続く。
英治は俺の隣に席を移し、空いた席を彼女に譲った。


「この間はありがとう。お陰でサユの誕生日は大成功だったよ」

「ホントですか? 良かった!」


途端に、彼女の顔に笑みが広がる。
笑った方が幼く見えて可愛い感じだな。


「お礼に何かおごるよ。甘いものでもどう?」

「わあ」

「遠慮しないで好きなもの頼んでね。でないと川端くんに申し訳が立たない」

「主任に? どうしてですか?」

「ホントは彼氏なんでしょ」

「違いますよ!」



英治とその"美羽ちゃん"はもう仲の良い友人のように話しだす。

英治のこの人づきあいの良さは羨ましくもある。
俺だったらそんなに面識のない女の子をちゃん付けでは呼べない。

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