幸せ家族計画
「……それって川端くんの事? それとも他の男の事?」
「わ、私の事じゃないです」
茶化すように言った英治に、彼女は赤い顔をして答えた。
「美羽ちゃんの言う通りだ。お前らはもっと本心を言い合うべきだよ。
でないといつまでも胃痛も腹痛も治らないぞ」
「胃痛……なんですか」
「そうコイツ、心配症だから。胃薬は友達だろう」
「もう、うるさいぞ英治!」
そこでようやく笑いだして、彼女は手にフォークを持ち直す。
ケーキを全て食べた後、「ごちそうさまでした」と言って、彼女が席を立つ。
「あれ、もう行っちゃう?」
「はい。ちょっと調べたい事とかもあるので」
「そう、残念だな」
英治の言葉に、墨田さんが少し赤くなる。
この天然のタラシめ。
「英治、そんなことばっかり言ってると紗彩に言いつけるぞ」
「なんでだよ。別にそういうつもりで言ってる訳じゃないんだけどな」
頭をかく英治と、俺を交互に見て。
墨田さんはにこりと笑う。
「奥様を大切にしてあげてくださいね」
俺たちは、顔を見合わせて笑う。
「言われちゃったな」
なんて口にしながら。