幸せ家族計画


「……それって川端くんの事? それとも他の男の事?」

「わ、私の事じゃないです」


茶化すように言った英治に、彼女は赤い顔をして答えた。


「美羽ちゃんの言う通りだ。お前らはもっと本心を言い合うべきだよ。
でないといつまでも胃痛も腹痛も治らないぞ」

「胃痛……なんですか」

「そうコイツ、心配症だから。胃薬は友達だろう」

「もう、うるさいぞ英治!」


そこでようやく笑いだして、彼女は手にフォークを持ち直す。
ケーキを全て食べた後、「ごちそうさまでした」と言って、彼女が席を立つ。


「あれ、もう行っちゃう?」

「はい。ちょっと調べたい事とかもあるので」

「そう、残念だな」


英治の言葉に、墨田さんが少し赤くなる。
この天然のタラシめ。


「英治、そんなことばっかり言ってると紗彩に言いつけるぞ」

「なんでだよ。別にそういうつもりで言ってる訳じゃないんだけどな」


頭をかく英治と、俺を交互に見て。
墨田さんはにこりと笑う。


「奥様を大切にしてあげてくださいね」


俺たちは、顔を見合わせて笑う。


「言われちゃったな」

なんて口にしながら。

< 275 / 419 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop