幸せ家族計画
軽食を食べ終え、店を出たのは昼過ぎ。
英治はマスターを言いくるめて、サンドイッチを持ち帰り用に作ってもらっていた。
相変わらず度胸のある男だ。
「紗彩食えるかな。旨かったから食べさせてやりたいんだけど」
「つわりだっけ。ひどいのか?」
「結構。一日に何度か吐いたりする。ちょっと痩せたんだよ。妊婦が痩せて大丈夫なのかって思うんだけど」
「それを聞くと、綾乃は元気な方の妊婦なんだなぁ」
「そうだよ。お前は心配し過ぎ。まあでも、家に居て欲しいならそう言えばいいじゃん。あの子は喜ぶんじゃない?」
「束縛にならないかな」
「放置よりマシだと思う」
結局悩みは解消したようなしていないような。
溜息ばかりがこぼれ出る。
それを見て英治が笑いながら言う一言。
「お前は悩んでんのが幸せなんだろ?」
あまりにも的を射ていて、俺は返す言葉が無かった。